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「教えた」だけから「できるようにする」指導への変革を!

更新日:2023年6月17日


「センセイ、ニホンゴ ワカラナイ・・・」

 「またか・・・・。」

 先日、ある子どもの入室がありました。プラス・エデュケート(以下 プラエド)では、随時新入生を受け入れますが、その前に、ヒアリングと日本語のレベルテストを行います。冒頭の言葉は、その結果を聞き、思わずもれた感想でした。

 この子どもは来日後、毎日学校の日本語教室に通い、数か月が経っていると聞いていました。しかし、名前以外、簡単な自己紹介すらできず、「水筒、窓、階段」といった身の回りのものや食べ物の名前、基本的な動詞や形容詞も答えられません。そこで、担当の教師が保護者に、緊張しているのではないかと聞くと、

「イイエ、 センセイ、 ワタシノコドモハ ニホンゴ ワカラナイ・・・。」

そしてそのあと、続けて、

「センセイ、 デモ、 ヒラガナ ワカル!!」と言ったそうです。


子どもたちからの無言の訴え

 プラエドで受け入れる子どもたちの中には、このような子が少なくありません。この子は毎日勉強しているのに、どうして全然日本語がわからないのだろうと、不安な日々を送っていたはずです。ひらがなはわかるけど、友達に話しかけられても理解できず、笑顔で応じることしかできない。自分から話しかけたくても、なんといっていいかわからないし、なにをすればいいかわからない。そんな状況が、数か月間も続いた彼の気持ちを思うと、やるせなくなります。

 この子がこれまで受けていたのは文字指導中心。重要ではありますが、これは日本語指導の中の一部にすぎません。おそらく、子どもにとって一番必要な「聴く」「話す」といったコミュニケーション力を伸ばすための指導が十分ではなかったのでしょう。しかし、このような事例は決して珍しくありません。他にも、「ニホンゴ ムズカシイ。ボク、ダメネ。」と自信を喪失してしまった子どもや、来日して1年以上経過しているのに、日本語が壁となって不登校になっている子どもなど年齢も背景も違う子どもたちが悩み、苦しんでいます。


「教えた」だけでなく、成果を検証する指導への転換を

 日本語指導を行っている学校やNPOは多いと思いますが、その指導は、子どもが成果を実感できるものになっていますか?指導内容について検証し、改善していますか?

 「理解したかどうかわからないけれど一応教えた。」「やらないよりはやったほうがいいだろう。」「全然話さないけれど、学校に通えているからよい。」などと自分自身に言い訳をしていませんか?

 「指導時間や人手が足りない。」「忙しくて、教材研究の時間がない。」と、比較的取り組みやすいひらがな・漢字などの文字指導やプリント作業中心になってしまっていませんか?

 やはり、それでは子どもの力は伸びません。

 どのような内容の話がどれくらいの速さで聞き取れるか。獲得語彙数はどれくらいか。初めて読む文章の大まかな意味がわかり、それについて自分の感想や意見を述べることができるか。テーマにそった内容のある作文が書けるようになったかなど、私たち指導者は、担当する子どもが指導の結果できるようになったことを把握しなければなりません。そして、「聴く・話す・読む・書く」という力のバランスも考慮したうえで、次の指導へ生かしていく必要があると思います。


 子どもが1日でも早く、日本語を使って教室で活動できるように、「教えた」だけでなく、その成果を検証する指導へと変えていきませんか。


 もちろん、プラエドもそうあるべきだと考えますし、質の高い日本語教育を行えるよう日々努力を重ねていきたいです。そして、そのように考える指導者が増えることを期待しています。




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