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活動の背景
​(解決したい社会問題)

足りない労働力を補うために受け入れられている外国人 

 世界は私たちの想像を超え目まぐるしく変化し続けています。グローバル化の拡がりやテクノロジーの発達による新しい時代への期待が高まっていた中でおきた、パンデミックによる混乱や紛争の脅威。加えて、エネルギーや食糧供給の危機も顕在化し、未来における不確実性は高まる一方です。

 

 そして、国内に目を向けてみると、経済の停滞が続きインフレが加速、加えて我が国は深刻な人口減少社会となっています。政府はこれまで長い間少子化対策に取り組んできましたが、今のところ目立った成果は上げられていません。そのため、足りない労働力を補うために、外国人が受け入れられてきました。1990年の法改正から外国人の数は増え、今や在留外国人数は約300万人を超えています。(2022年度末)しかし、長期定住者への日本語教育や生活支援などの対応策が十分に議論、整備される前に受け入れが進んだことで、地域では様々な問題が起きました。

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「どうして日本へ行かなければならないの?」

自分の意志ではなく連れてこられた子どもたち

 私たちは、そのような外国人労働者とその家族、とりわけ子どもに特化して、日本語と教科学習支援を行っています。大人の場合は、留学生や技能実習生、高度人材など立場はそれぞれであっても、来日目的を持ち、行動や思考の決定権は自分自身にあります。しかし、一緒に連れてこられた子どもの中には、親の言うとおり国を離れることに納得していなかったり、友だちと十分な別れもできずに来日したという子どももいます。

​「日本語がわからないから学校へ行きたくない...」

​社会から孤立する子どもたち

 親は来日後すぐに仕事を始めますが、その間子どもたちを家に置いていくわけにはいかず、公立の学校へと通わせます。そこは、日本語しか通じない世界。しかし、母国で来日前に十分な日本語教育を受けている子どもは、ほとんどいません。何を言っているかわからず、誰とも話さずに1日を過ごす子どもたち。助けを求めたくてもその言葉を持たず、見よう見まねでうまくなじんでいるように演じている子どもたち。あきれたことにその様子を見て、「彼らは学校に文句を言ってこないからむしろ楽だ」と言った方もいます。我が国の大半の学校は日本語が通じることが前提ですから、マイノリティである彼らの気持ちは伝わらず、そのうちに学校に行くことができなくなってしまう子や、その後、社会との接点を見いだせず家族という小さな集団の中だけで生活するようになってしまう子どももいます。​まさに社会からの孤立を生み、貧困の連鎖を生む要因になりかねません。

<全国の学校に約6万人-日本語指導が必要な子どもたち(2021年度時点)

​※文部科学省:日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果報告書(概要版)より作成

 文部科学省の調査によると、日本の公立学校には、日本語がわからず困っている児童生徒が約6万人在籍しています。2021年までの10年で1.7倍となり、コロナ禍で入国制限がかかっていたにも関わらず減っていません。

折れ線付き 公立学校における日本語指導が必要な児童生徒数の推移.png

 外国ルーツの方が多く暮らす集住地区では学校に日本語教室が設置されているところはありますが、そうではない散在地区ではそのような体制が整っておらず、自治体により支援体制は大きく異なります。そのため、日本語指導が必要な子どもたちの全体の3分の1、約15,000人の子どもたちが、学校では何の支援も受けることができない「無支援状態」となっています。

<高校進学状況は90%未満で、中退率は全高校生の5倍。 非正規就職率は全高校生の12倍!>

 さらに、高校進学状況も調べてみますと、外国ルーツの子どもの高校進学率は90%未満です。全中学生の高校進学率が99.2%という数字からすると、少ないことがわかります。実際は、日本語が理解できなければ受験ができません。たとえ高校に入学できても日本語で教科理解ができなければ、ついていくことはできません。そのせいか中退率は全高校生の約5倍で、非正規就職率も12倍と非常に高くなっています。

 

 この理由の一つに、十分な日本語教育を受ける機会を得られていないことがあげられるのではないでしょうか。これでは、SDGsの目標に近づけているとはいえません。

<進学率>

全中学生

全中学生の進学率.png

日本語指導が必要な中学生

<中退率>

全中学生

全高校生の中退率.png

日本語指導が必要な高校生

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<非正規就職率>

全高校生

全高校生の非正規就職率.png

日本語指導が必要な高校生

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<指導者が足りない!>

 進学率や中退率などのデータは、16歳以上の子どもについてですが、実際は小中学生でも、不登校や不就学(学校に行く手続きすらしていない)状態である子どもたちがいます。文部科学省の発表によると、2022年度時点で不就学の可能性がある子どもは約1万人だそうです。その理由の一つが日本語がわからないことにあると考えられています。そのため、来日後すぐに質の高い日本語教育とその機会を得られるようにすることが必要です。 

 しかし、日本語指導が必要な子どもに、教育の機会を与えられない原因の一つに、指導者不足があります。そもそも学校の教員不足は、全国的に起こっている問題であり、その中で日本語教育の専門的な知識と指導法を身につけた方を探すことは至難の業です。ですから、学校で指導を受けられない子どもも多いし、指導を受けていたとしても時間数が足りなかったり、内容が不十分だったりするため、地域のボランティアさんが、週に1回程度のサポートをしているというところもたくさんあります。

 さらに大人への日本語教育は、様々な指導法や教材が紹介されていますが、子ども向けのものは十分とは言えません。加えて子どもたちのやる気を維持し、日常会話だけでなく教科学習へとつなげられる日本語指導が求められているため、高度な技術と教師力が必要です。多くの子どもたちへの日本語教育を可能にするには、指導者の育成が不可決なのです。

無限の可能性を秘めている外国ルーツの子どもたち​

 しかし、子どもたちは日本語がわからないだけで、能力が低いわけではありません。中学生以上の大人ならまだしも、年少者の子どもに対して日本語習得を自立学習に求めるのは無理難題を押し付けているようなものです。私たちが指導してきた子どもは、まだ母語獲得も十分でないような成長段階にある子や、第2言語の学習経験がない子もいます。私たちにとっては簡単に思える日本語は「外国語」としてみると、決して簡単だとは言えません。彼らだってポルトガル語やベトナム語では十分にコミュニケーションが取れるし、教科内容も理解できます。でも日本の学校で学ぶというのは、日本語で友達と交流でき、学習についていけなければなりません。そうでなければ学校は決して彼らの居場所にはならないのです。​まずは、必要最低限の日本語を身につけさせることが、彼らの能力を発揮することにつながります。

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