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  • 森 顕子

「最初の日本人」=「私」である責任



 2020年となり、新入生を迎えたクラスでの授業が始まりました。プラス・エデュケートでの日本語指導初日、本人たちは当然でしょうが、私たち教師も緊張感をもって迎えます。なぜなら、日本語が全くわからない子どもたちが、親に「プラス・エデュケートというところで日本語を勉強しなさい。毎日そこに通って日本語をしっかり勉強して、午後から学校に行きなさい。」と説得されて、通ってくるのはとても不安なはずだからです。加えてプラス・エデュケートは基本的に「直接法(ダイレクトメソッド)という日本語を日本語だけで教える(翻訳を使わない)」という指導法をとっているため、通訳が常時いるわけではありませんし、すべての言語の通訳を配置するというような人的、資金的余裕はありません。つまり、子どもたちからすれば、初日から母語(彼らがこれまで生活で使用してきた言語)を使えず、日本語だけで1日過ごすことになるのです。


 ですから、初日に担当する教師は、子どもたちにとって「初めて長い時間接する日本人」であり、そのイメージが「日本人」そのものになると思うのです。初めて会った日本人の先生は、「優しい」「明るい」「ぼくの/私の味方になってくれそう」という印象にならなければ、彼らのこれから続く長い滞日生活は、暗いものになってしまうかもしれません。なので、初日の担当は、「新人教師」は担当できません!新人の場合、自分のこと(今日の授業をどうするかとか、準備が万全か)に意識が集中してしまっていることが多いためです。そのせいか、理事長である私(森)が担当することが多いのですが、4時間の授業を終えて、見送った後には、どっと疲れます(笑)


 まず初日は、使う日本語は極力少なくします。日本語がわからないのに、日本語で語りかける、つまり「日本語のシャワー」を浴びせたら、プレッシャーをかけてしまうだけです。初日を担当する教師は言葉を介さない「ノンバーバルコミュニケーション」をとることが要求されます。そのためジェスチャーと表情、声のトーンを変えることなどして授業を行います。さらに、その上で、以下のようなことにも集中します。


 ① 担当する子どもの名前を完全に覚える。

 ② 子どもの理解レベルを把握する。

 ③ 子どもたちが笑顔で授業を終えることができるようにする。


 まず名前には、とても気を使います。日本語はわからなくても、自分の名前を呼ばれたことだけはわかります。だから名前を間違えられることはとても傷つくでしょう。絶対に名前を憶えてあげて、帰るときには「○○くん/さん、さようなら」というようにします。


 次ですが、プラス・エデュケートには、3か月分の授業カリキュラムがあります。基本的にそのカリキュラムに沿って授業が進みますが、当然子どもたちのレベルによっては、もっと早くだったり、すこしゆっくり進めた方がよかったりということがあります。その見極めをするのが、1日目の教師の重要な役割です。もちろん初日の印象ですべてが決まるわけではありませんが、1週間の授業をどう進めるかの判断は、初日にほとんど決まります。


 そして、最後にあげたことは、初日の「結果」です。

 4時間の授業を終えて、「楽しかった~」「日本語おもしろい~」「日本語の勉強、頑張れそう」という気持ちになることができれば、笑顔で終わることができるでしょう。その笑顔のために、初日の授業は様々な工夫が必要です。とにかく、子どもたちが自信をもてるよう、ほめることを意識的に行うのも、プラス・エデュケートの指導の特長です。初日を笑顔で終えることができれば、1週間はうまくいくと言っても過言ではありません。そのおかげか、これまで引っ越しなどの事情がない限り、プラス・エデュケートに来なくなってしまう子どもはいません。とにかく、日本語を学ぶことが楽しいと思ってもらうこと、それがプラス・エデュケートの授業初日に課せられた責任です。

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